この記事の目次
- 01この記事の結論
- 02建設業のAI活用事例12選
- 031. 大豊建設:規程検索から日常業務まで展開
- 042. 清水建設:全従業員へ生成AI環境を提供
- 053. 北野建設:技術調査と報告書作成を現場で検証
- 064〜5. 大成建設:検索と施工計画書作成を別々に設計
- 076〜8. 設計・品質・加工へ広がる画像系AI
- 089〜12. 専門LLM、技術伝承、図面拾い、自動施工
- 09事例から見える3つの共通点
- 101. AIの出力を「下書き」または「候補」にする
- 112. 汎用AIだけでなく、社内データと業務画面を組み合わせる
- 123. 技術精度と業務効果を分けて測る
- 13自社で小さく始める方法
- 14まとめ
- 15ケンセツAIラボについて
建設業でAIを導入する際、最初に確認したいのは「AIで何ができるか」ではなく、他社がどの業務の、どの工程までをAIへ任せているかです。
公開事例を見ると、AIが最終判断まで代替する取り組みより、技術資料の検索、文書の下書き、図面からの候補抽出、写真の一次評価など、人が確認できる中間成果物を作る用途が多く見られます。
この記事では、2026年7月14日までに企業や官公庁が公開した情報から、建設業のAI活用事例を12件整理します。各社との提携や、ケンセツAIラボによる支援実績を示す記事ではありません。
この記事の結論
公開事例は、次の5領域に分けると自社への適用を判断しやすくなります。
- 社内資料・技術情報の検索
- 文書作成・要約・校正
- 図面・手書き情報の読み取り
- 写真・画像による品質評価
- 建設機械・施工プロセスの自動化

公開情報に精度、費用、対象人数が記載されていない場合、本記事では推測して補いません。「開発」「試験導入」「全社展開」「現場運用」を区別して記載します。
建設業のAI活用事例12選
企業・組織 | 公開された用途 | 公開段階 | 人が残す判断 |
|---|---|---|---|
大豊建設 | 規程検索、議事録、要約、文書作成 | 全社展開 | 回答・文書の確認 |
清水建設 | 調査、文書生成、要約、プログラミング補助 | 全従業員向け提供 | ハルシネーション確認 |
北野建設 | 技術・工法・規定・ヒヤリハット検索 | 建設現場で運用 | 技術判断、報告書確認 |
大成建設 | 建築施工技術のRAG検索 | システム開発 | 専門家による模範解答登録 |
大成建設 | 土木工事の施工計画書ドラフト | システム開発 | 経験者による特定箇所の精査 |
大成建設 | 建築パース生成 | 社内利用 | 設計者による選定・調整 |
大成建設 | コンクリート打継面の画像評価 | 現場で効果確認 | 施工管理上の最終判定 |
竹中工務店・爽美 | 手書き図から加工用CADを生成 | システム開発 | 加工条件、生成データ確認 |
西松建設 | 建設特化LLMによる文書作成支援 | 利用開始・機能開発 | 技術文書の確認 |
大日コンサルタント | 技術伝承用RAGチャット | 社内運用 | 登録知識の整備・更新 |
システムズナカシマ | 図面から材料候補を拾い出し | 製品提供 | 目視確認、修正、数量確定 |
鹿島建設 | AIを取り入れた建機の自動運転・施工計画 | 技術開発・施工 | 施工管理、安全管理 |
1. 大豊建設:規程検索から日常業務まで展開
大豊建設とAWSが共同執筆した事例では、「大豊AI」を2025年6月に全社展開し、約8か月で307人、累計32,709回以上の利用が記録されています。規程検索では約250時間の業務時間削減が公表されています(AWS公式事例)。
利用範囲は規程検索だけでなく、議事録、資料要約、メール作成、Excel関数の確認まで広がっています。まず日常的な質問で利用習慣を作り、専門業務へ広げた点が特徴です。
2. 清水建設:全従業員へ生成AI環境を提供
清水建設は2023年11月から企業向け生成AIサービスを導入し、2024年3月時点で1,200人以上が利用していると発表しました。用途は調査、アイデア出し、文書生成、プログラミング補助、要約です(清水建設公式発表)。
同社は同時に、検索用途ではハルシネーションが起こり得ることも明記し、教育と利用ルール整備を続けています。全社導入では、利用者数だけでなく「使ってはいけない場面」を伝える必要があります。
3. 北野建設:技術調査と報告書作成を現場で検証
北野建設と日立ソリューションズは、技術・工法・規定・ヒヤリハット事例の検索や、週次報告書の一部作成を対象に検証しました。2026年5月には、その成果をもとに構築した生成AIシステムを建設現場で運用開始したと公表しています(北野建設公式発表)。
4〜5. 大成建設:検索と施工計画書作成を別々に設計
大成建設の「建築施工技術探索システム」は、RAGで関連資料を検索し、回答が不正確だった場合には専門家が模範解答を登録する仕組みです(大成建設公式発表)。
別の「全体施工計画書作成支援システム」は、公共工事の発注情報と技術ナレッジから国土交通省書式に準拠したドラフトを作ります。同社は従来比約85%の作業時間削減が可能と公表していますが、経験豊富な技術者が特定箇所を精査する工程も残しています(大成建設公式発表)。
6〜8. 設計・品質・加工へ広がる画像系AI
大成建設は、スケッチや模型をもとに建築パースを生成する設計支援システムを社内利用しています。また、ダムのコンクリート打継面をタブレットで撮影し、処理程度を即時・定量評価する技術を開発し、建設現場で効果を確認しています(大成建設技術センター報、打継面評価技術)。
竹中工務店と爽美は、技能工の手書き図を撮影し、AIが加工用CADデータへ変換する「AI i-Bow」を開発しました。生成データはCAM技術を介して加工機の動作へ変換されます(竹中工務店公式発表)。
9〜12. 専門LLM、技術伝承、図面拾い、自動施工
西松建設は建設特化型LLMを導入し、社内文書参照や専門的な技術文書の作成支援機能を開発しています(西松建設公式発表)。
大日コンサルタントの「D-AI-Chat」は、整理・構造化した技術知識をRAGへ与える仕組みです。国土交通省の資料では、社内に3,500件以上の記事が投稿され、社員の半数以上が月10回以上利用していると紹介されています(令和7年度インフラDX大賞)。
システムズナカシマの「拾いの匠NX」は、CADやPDF、紙図面を対象に材料候補を抽出し、結果を目視確認して帳票や積算システムへつなぎます(公式製品情報)。
鹿島建設のA4CSELは、熟練オペレーターの操作データをもとにした自動運転技術と、複数建機の配置・手順を計画する施工マネジメント技術を組み合わせています(鹿島建設公式情報)。
事例から見える3つの共通点
1. AIの出力を「下書き」または「候補」にする
検索回答、施工計画書、拾い出し結果、品質評価のいずれも、人が確認できる中間成果物として出す設計が中心です。
2. 汎用AIだけでなく、社内データと業務画面を組み合わせる
利用が専門業務へ近づくほど、技術資料、図面、過去帳票、社内用語、権限情報が重要になります。AIモデルの性能だけでなく、データ整理と業務フローへの組み込みが導入範囲を決めます。
3. 技術精度と業務効果を分けて測る
正答率や検出率が高くても、確認・修正に時間がかかれば業務効果は限定されます。PoCでは精度だけでなく、検索時間、修正時間、例外件数、利用頻度も記録します。
自社で小さく始める方法
- 毎週発生する業務を1つ選ぶ
- 匿名化した実データを3〜10件用意する
- AIに任せる工程と人が確認する工程を線引きする
- 正解例と評価指標を決める
- 2〜4週間の試行で修正時間まで記録する
対象業務をまだ決めていない場合は、建設業で最初にAI化する業務の4つの判断基準も参照してください。
まとめ
建設業のAI活用は、社内検索や文書作成だけでなく、図面、積算、品質評価、加工、自動施工まで広がっています。ただし、公開事例の多くはAIだけで業務を完結させず、根拠確認、数量確定、施工判断、最終承認を人が担当しています。
まずは、自社で繰り返し発生し、正解例があり、担当者が結果を確認できる業務から検証します。
ケンセツAIラボについて
ケンセツAIラボは、建設・設備業の図面拾い出し、社内資料検索、受発注転記などを対象に、業務整理からPoC、システム実装、運用改善まで支援します。
完成済みの汎用サービスを一律に当てはめるのではなく、実際の図面・帳票・資料を確認し、AIに任せる範囲と人が確認する工程を整理します。要件が固まっていない場合も、現在の業務フローから検証候補を絞ることができます。
AI USE CASE DIAGNOSIS
どの業務からAI化すべきか、まだ決まっていなくても大丈夫です。
現在の業務フローを伺い、小さく検証しやすい対象業務と必要データを整理します。
ケンセツAIラボ編集部
建設・設備業の図面、仕様書、見積、受発注など、各社固有の業務に合わせたAI活用を調査・発信しています。
監修:株式会社ドットログ 開発チーム




